イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 他

レヴェナント 蘇りし者 ★★★★★★☆☆☆☆
「バードマン」でアカデミー賞の作品賞を獲ったアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の最新作。そこに主演がレオナルド・ディカプリオと来れば期待するなという方が無理な話です。イニャリトゥ監督としては最高級の映像。熊とグラス(ディカプリオ)の格闘シーンは話題になりすぎて想定内に終わってしまいましたけど、雪に覆われた大自然を普通に観ているだけでもワクワクできました。
ただ、前半の緊張感に比べると後半は淡白だったなぁ。グラスはただただフィッツジェラルドを追いかけるだけ。本当なら熊に負わされた傷との戦いも見どころの一つになるはずなのに、その壮絶さがどうも嘘臭く映るんですよね。ディカプリオにオスカーをあげるんだったら絶対に「ウルフ・オブ・ウォールストリート」の方が相応しいと思うし、本作のグラス役ならもっと適した俳優がいたはずという思いだけが残りました。
全体的に力を入れて作られたのは伝わるものの、捻りが少なく面白味には欠けた作品でした。

◆アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督作品の評価
「バードマン あるいは (無知がもたらす予期せぬ奇跡)」 ★★★★★★★★☆☆

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 ★★★★★★★★☆☆
最初に乱暴な言い方をしてしまいますが、僕が現在のハリウッド俳優で<生理的に>苦手な俳優というのが3人いて、一人が「レ・ミゼラブル」で最初に観たエディ・レッドメイン、もう一人が「マイティ・ソー」のトム・ヒドルストン、そしてこの作品の主演を務めているベネディクト・カンバーバッチなのです。
しかし、エディが「リリーのすべて」の繊細な演技で一気に印象をよくしたのと同様に、カンバーバッチも本作での演技は抜群でした。彼が演じたのはエニグマ解読に挑むイギリス人数学者、アラン・チューリング。周囲に理解されず上手く溶け込めないという天才ならではの欠点も持ち合わせているものの、後に婚約するジョーン(キーラ・ナイトレイ)らの支えもあり、現在のコンピューターの基礎と作り上げるまでに至ります。
エニグマに関してはタイトルほど重視されていませんし、マシュー・グードとキーラ・ナイトレイの好演はあってもヒューマンドラマとしても良作止まり。しかし、主人公の孤独が凄まじく胸を打ちました。同性愛者が罪と言われていた時代に育った彼は若くして死んだ初恋相手の名前をコンピューターに付け、愛情を注ぎます。ただ変わり者なんじゃない、その相手ほど愛せる人間がいなかっただけなんだというのが悲しみに拍車をかけるし、結末も惨いものです。それでも、「誰も予想しなかった人物が誰も想像しなかった偉業を成し遂げる事だってある」、「あなたが普通じゃないから世界はこんなにすばらしい」という劇中の名セリフが、彼が決して不幸な人間ではなかったということを証明し、不思議と背中を押されたような気分になりました。

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ムーンライト

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今年のアカデミー賞で作品賞を受賞した上に、おそらく発表時のアクシデントにより注目度が増し、近所のシネコンでも急遽上映されることになったので、さっそく観に行ってきました。
差別を描いた映画は数あれど、黒人でゲイというマイノリティ×マイノリティ作品は珍しいですね。黒人映画というと銃とドラッグに塗れたマッチョな世界か、白人から迫害される差別を描いた内容と相場が決まっていたんですが、本作はストレートな恋愛映画です。

この映画、登場人物のほとんどが黒人なので、人種差別というものは存在しません。しかし、ゲイの主人公は気が弱くナヨッとしているので、マッチョな黒人社会では当然のように虐められます。加えて、母親はドラッグ依存症。
少年時代の主人公、シャロンはそんな苦境にありながらもフアンという男と出会い、泳ぎを教わったり心の安らぎを得ながら成長していきます。10代になった彼は同級生に恋をし、距離を縮めていきますが、同性愛が理解されない世界の中でそれもまた悲しい終わりを遂げてしまいます。映画は彼が20代に成長し、その相手と再会するところまで描いているんですが…。

まず印象に残ったのが映像と音楽の美しさ。
作品名にあるように、映像面の見せ場は月明かりに照らされて青く輝く黒人の肌でしょう。中でもフアンがシャロンに泳ぎを教える場面ではその水面の揺らぎと、BGMのヴァイオリンが素晴らしくマッチして官能的ですらありました。
黒人映画でここまで静かで繊細な作品は過去になかったのではないでしょうか。

キャスト的にも、それぞれの世代のシャロンを演じた3人も素晴らしかったですし、オスカーを獲ったマハーシャラ・アリはもちろん文句なし。しかし、個人的にはドラッグ依存症の母親を演じたナオミ・ハリスにグッときました。「007」シリーズではゴージャスなマニーペニーだった彼女が、クスリ漬けで息子に暴言を浴びせる最低な女なんですよ。これが本当に憎くて仕方ないんですが、同時に「ナオミ・ハリス、すげーぞ」と感心しっぱなしでした。ミュージシャンのイメージしかなかったジャネール・モネイもよかったな。

ただ、10代の展開が最高だっただけに、20代のエピソードが弱く感じてエンディング後の余韻が残らなかったのは残念。観賞後のカタルシスはゼロに近かったです。
そのせいか、アカデミー賞の作品賞という目で見るとやや弱い気もして、ここ数年、白人至上主義と言われたアカデミー賞や、トランプ政権の反動というのも否めませんけど、逆にオスカーを獲らなければ隠れた名作として語り継がれていた可能性もあるなと思わせてくれる、そんな秀作でした。

★★★★★★★★☆☆

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リリーのすべて 他

リリーのすべて ★★★★★★★★★☆
世界で初めて性転換手術を受けたトランスジェンダーの(元)男性と、それを支える妻の物語。
女装したエディ・レッドメインはジェシカ・チャステインを彷彿とさせる部分もあり、女性からも好かれそうな感じではあるものの、自分はどうもあの顔が苦手なんですよ。しかし、今回はそんなことも中盤から忘れてしまうくらい見事な役作りでした。自分の中に違う性が眠っていることなど、僕には想像もできませんが、彼はそれを超えて命を懸けて本来の自分を得ようとした強い精神までも完璧に表現していたと思います。
ただ、本作はやはりアリシア・ヴィキャンデルなしには語れません。最初は自分のアイデアのせいで夫を目覚めさせてしまった残念な妻といった感じでしたけど、次第に夫を支える逞しさを発揮し出し、性転換手術に向かう別れの時の涙にはこちらの涙腺も崩壊してしまいました。
ベン・ウィショーがゲイ役で出演しているというのも興味深い点か…。
全体的に胸が痛くなる話でもあるんですが、背徳的で不思議な高揚感も得られる場面も一部あったりと、映画としてもダレないような配慮がされている傑作。予告編で少しでも興味を持った人なら観て損はないはずです。

◆トム・フーパ―監督作品の評価
「レ・ミゼラブル」 ★★★★★★★★★☆
「英国王のスピーチ」 ★★★★★★★★☆☆



ウォールフラワー ★★★★★★★★☆☆
レンタルショップでプッシュされていて長らく気になっていた作品をようやく観賞。無難な良作かと思いきや、意外なほどツボにハマる要素が多くて、2度も観てしまいました。
今作最大の掘り出し物は、ローガン・ラーマンという若手俳優。子役としてのキャリアがあり、これまでも「パーシー・ジャクソン」シリーズや「三銃士」などで主演を務めてはいますが、僕は初めて知りました。無口で日陰の男の子の役をここまで自然にできるというのはある意味非凡な才能。既に代表作を持っているエマ・ワトソンや、「少年は残酷な弓を射る」で抜群の個性を放っていたエズラ・ミラーと並んでも遜色ない魅力を持っていましたね。青春映画としては本当に大好きな作品です。
唯一、叔母と親友を亡くし、精神を病んでいるという主人公の設定がいまいち伝わりづらいところだけが気になりました。叔母との関係性などは原作ではきっと細かく描かれているんでしょうけど、映画だけではぼんやりとしか見えずに消化不良です。

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ラ・ラ・ランド

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アカデミー賞の作品賞を獲ることはできなかったものの、最多部門で受賞し、賞レースの主役となった作品。批評家からは公開前から絶賛される一方、日本で封切りとなってからは批判的な意見も出ましたが、それだけ注目度の高い作品と言えるはずです。

僕自身、昨年から楽しみにしていたのでハードルは上がっていたはずなんですけど、本作はその期待にしっかり応えてくれました。
とにかく、冒頭の「Another Day of Sun」が最高なんです。この渋滞シーンでの歌とダンスに完全に惹き込まれてしまい、開始早々脳内でスタンディングオベーション。舞台となった道路の長さと車の多さだけでも傑作を予感させるに十分ですし、長回しが活きています。

ただ、それが過ぎると物語は意外なほどありがちでした。
お互いに第一印象が最悪だった男女が、夢を追いかけているという共通点を見出すことで距離を縮めるも、恋愛と夢の狭間で気持ちが揺れ、徐々にすれ違うようになる…という、何とも使い古された話。
もちろんそれを華やかな映像やバリエーション豊かな楽曲で包んでいるために飽きることはないんですが、導入がよすぎたために少しテンションは下降気味。主題歌ともいえる「City Of Stars」も印象的ではあるけども、何度も繰り返されるとウンザリしてしまいました。

そのイメージを払拭してくれたのがラストシーンですよ。ここから先は少しだけネタバレあり。これから観賞予定のある方は読まずにおくことをオススメします。

成功を収めたミア(エマ・ストーン)が夫と偶然訪れたバーで、支配人を務めているセバスチャン(ライアン・ゴズリング)と再会。ここで走馬灯のように蘇るシーンはすべてが美化されていて、最高の気分に持っていかれるとともに意表をついた切なさに全身が包まれます。成就しなかった恋愛がこんなに美しく映るとは。そしてこれだけベタなロマンチックさを描きながら、恥ずかしげもなく感動できたところに自分でも驚かされました。途中でどんなにダレようが、最初と最後が素晴らしい映画がダメなわけがないと断言してしまいましょう!

それにしてもこれ、若い子よりもある程度年齢が上の人が観た方が感情移入できると思うんですよ。10代、20代で現在よりも過去の恋愛を引きずる人はそんなにいないでしょうから。過去にそこそこの恋愛をしたことのある人間ならば、心の底に眠っていた熱い気持ちが湧き上がるのを抑えられないはず。それをまた、30歳そこそこのデイミアン・チャゼル監督が作り上げてしまったことが驚異的です。
映像や音楽の素晴らしさを考えれば映画館で観るべき作品であることは確かですが、ブルーレイで好きなシーンだけを繰り返し観たくもなりました。

個人的には、ピアノマンのイメージが強かったジョン・レジェンドがギターを弾きながら歌う姿を見られたのも得した気分ですね。

★★★★★★★★★☆

◆デイミアン・チャゼル監督作品の評価
「セッション」 ★★★★★★★★☆☆

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雨の日は会えない、晴れた日は君を想う

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有休を使って昨日新宿シネマカリテに観に行ってきました。そういえば、去年も有休を取って同時期に同じ劇場で「ロブスター」を観たな…。

「ロブスター」も相当変な映画でしたが、この作品もなかなかおかしな設定です。
主人公のデイヴィス(ジェイク・ギレンホール)は妻を交通事故で亡くしたにもかかわらず全く悲しみが訪れず、悲嘆に暮れる代わりに奇妙な行動に出るようになります。

その行動の一つが、原題でもある破壊(Demolition)行為。
物騒な話ですけど、別に見境なく壊して回るわけではなく、故障しかけた身近なものを一旦壊し、改めて組み立てようとしているんですよね(劇中では組み立てる姿はほとんど見られませんが…)。

もう一つは、自動販売機の管理会社との文通。
妻を亡くした病院でデイヴィスはチョコレートを買おうとするものの、その自動販売機の調子が悪くて商品が出てこない…。ふとした思い付きで彼は管理会社に報告の手紙を書き、そのついでになぜか自らの身の上も語り出します。そしてその突拍子もないクレームに反応する苦情係のシングルマザー、カレン(ナオミ・ワッツ)。現実にはまずあり得ないこの二人のやり取りが想像力を掻き立ててくれ、物語を引っ張ってくれます。

その物語の中心にいるジェイク・ギレンホールは「ナイトクローラー」とは別のベクトルでハマり役。カレンやその息子、そして義父、相手によって様々な顔を見せながらも不自然さが皆無ですし、中盤突然弾けたように狂い出す彼が不思議と魅力的に見えました。
ただ、防弾チョッキを着た自分に向けて、子どもに銃を撃たせるシーンだけは不快感しか残りませんでしたが…。

破壊行為に関しては、いわゆる断捨離のようなもので、「ファイトクラブ」を彷彿とさせるところがありますね。しかし、破壊の後に見出だすのが自己ではなく、他者との関係というのが大きな違い。じんわり心が温まる結末に向かいます。ただ、彼が最後に何を見つけたのかという肝心な部分が不明瞭。邦題に繋がる車の中の書き置きも、タイトルになるほどのインパクトがなくて不満が残りました。
全体的にいい雰囲気を漂わせながら、あと一歩説明不足だった惜しい作品といったところ。

★★★★★★★☆☆☆

◆ジャン=マルク・ヴァレ監督作品の評価
「ダラス・バイヤーズクラブ」 ★★★★★★★☆☆☆

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いぬふく

  • Author:いぬふく
  • 趣味は多数。テニスは主にWTA(女子テニス)、音楽はアメリカンR&BとHIPHOP、ゲームと映画、読書はジャンル問わず。
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