キャロル 他

完全なるチェックメイト ★★★★★★★★☆☆
チェスの王者、ボビー・フィッシャーの伝記映画。とはいえ、チェスのルールはよく知らなくても問題ありません。これは米ソの冷戦をチェスを通して描いた作品、そしてソ連を倒す秘密兵器としてスターに仕立てられたボビーの苦しみを描いた作品です。ボビーは精神を病んでいたようにも見えますが、当時の国の事情や、神経を極限まで擦り減らして戦うチェスという競技の特性を考えると、無理もなかったと思わされました。
チェスの見せ場はかなり少ないです。対局シーンは短いので細かい展開が解るわけでもないし、当然必殺技が炸裂するわけでもありません。それでも、これだけ地味な題材をよくここまで面白く仕上げたものだと感心させられます。
本作の最大の魅力はトビー・マグワイアの演技。彼はナードな役がよく似合いますね。作品にもっと話題性があればトム・ハンクスやレオナルド・ディカプリオと肩を並べるほどの存在になったのではと考えてしまいますけど、きっと派手さがない現在の雰囲気だからこそいいんでしょうね。



キャロル ★★★★★★★★☆☆
キャロル(ケイト・ブランシェット)とテレーズ(ルーニー・マーラ)という二人の女性による恋愛映画。1950年代に女性同士の恋愛というのは今以上に偏見の目に晒されていたはずですし、そこに不倫という要素も絡んでくるので批判の的にもなりそうですが、品のある映像と音楽、そして二人の演技によって、美しい作品になっていました。特にケイト・ブランシェットは「ブルージャスミン」で痛々しい女だったのが嘘のように上品で芯の強い女性に…。ベッドシーンは大抵胸に目が行きがちですけど、彼女の背中はまさに"抱きたい女"ではなく"抱かれたい女"としての魅力全開でした。
二人がお互いに惹かれ合う流れがいまいちはっきり見えてこなかったため、中盤の盛り上がりに欠けてしまったのは残念ですけど、ラストの親権争いでのキャロルの強い意志、その後のテレーズとの再会シーンで重なり合う二人の視線で最高の余韻を残してくれます。

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たかが世界の終わり 他

スプリット ★★★★★★★☆☆☆
シャマラン監督で、ジェームズ・マカヴォイが多重人格者を演じるというだけで観る気満々だった作品です。
「つぐない」や「ウォンテッド」では優しそうな文芸青年を演じていたマカヴォイが、今回はスキンヘッドで強面の男や女性、少年までを怪演。ただ、それだけで必見と言いたくなるほどのインパクトはなかったかな。彼なら当然この程度はできるだろうという想定の内に収まっていました。加えて、展開自体も目新しいものではなかったし、続編ありき、しかも他作品とのクロス・オーヴァーという作りも敷居を上げてしまったかな、と。
期待値が高かったために生じる不満はありましたが、次回作が公開されれば確実に観ると断言してしまうくらいのクオリティではありましたし、再観賞すれば新たな発見がありそうという思いは芽生えました。またどこかのタイミングで観返してみるつもりです。

◆M・ナイト・シャマラン監督作品の評価
「ヴィジット」 ★★★★★★★☆☆☆

たかが世界の終わり ★★★★★★★☆☆☆
ヴァンサン・カッセル、マリオン・コティヤール、レア・セドゥといった魅力的なキャスティングによる会話劇。自身が余命僅かであることを家族に伝えようと帰省したルイ(ギャスパー・ウリエル)だが、家族の意味のない会話に阻まれてなかなか切り出せない…。大筋はたったそれだけです。
いやぁ、とにかく会話が長いんです。主人公の兄はいちいち話に茶々を入れてくるし、それが発端となり家族内で喧嘩が勃発。全編通してずっと息苦しさが漂っています。フランス映画らしいクセの強さもあり、決して万人受けする作品とは言えませんし、「わたしはロランス」のようなアーティスティックな作風ではなくて、もっと脚本で魅せるタイプの映画なので彼のファンにどう映るのかはわかりませんが、個人的にはグザヴィエ・ドラン作品で最も楽しめました。
自分の好きな話をするのに一生懸命な家族は自分勝手のようにも見えるし、ルイの告白の気配を察して必死にそれを避けているようにも見える。かけがえのない存在であると同時に、身を置くと檻に閉じ込められたような感覚になることもある家族というものを、最高の空気感で表現していたと思います。
邦題は原題の「It's the End of The World」の直訳ではありますが、このタイトルだけでも映画を観たくなるほどのインパクトがありますね。そこも素晴らしい!

◆グザヴィエ・ドラン監督作品の評価
「トム・アット・ザ・ファーム」 ★★★★★★☆☆☆☆

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ハードコア 他

彼は秘密の女ともだち ★★★★★★☆☆☆☆
ライトなフランス映画の話題作には高確率で出演しているロマン・デュリス。今回はついに女装にチャレンジしています。
妻のローラを病気で亡くしたダヴィッド。ローラの親友だったクレールは、残されたダヴィッドとその娘を心配して家を訪ねると、そこには女装して娘をあやすダヴィッドの姿が…。
今年観た「リリーのすべて」も女装から発展するストーリーでしたが、似て非なるものでした。リリーは性同一性障害でしたけど、ダヴィッドの方は身体の内に女性性を秘めながらも(真相はともかく)あくまで恋愛相手は女性。しかも、話としてはクレールがメインになっているため、ダヴィッドの気持ちが全く見えてこないんですよね。二人の関係も、女装しても決して美人にはならないダヴィッドも生々しさが先に立ってしまって、期待していたほどは楽しめませんでした。このモヤッとした後味はフランス映画っぽいですが…。

ハードコア ★★★★★★★★☆☆
全編主観視点のSFアクション映画。アイデア勝負といった感じでクオリティには期待していませんでしたが、これがなかなかどうして。まるでFPSゲームをプレイしているようで、そのハイスピードなアクションはまるで自分が凄腕ゲーマーになったような錯覚に陥るほど。何が起きているか解らない度合いは他のハイスピード・アクション映画以上ですが、それを受け容れてしまうほどの説得力がありますね。銃撃戦だけでなく、肉弾戦や逃走シーンも挟んでいるため単調さもありません。この感覚、The Weeknd「False Alarm」のPVに似ているなぁと思っていたら同じ監督でした。
画面酔いする人は最後まで観られないでしょうし、グロ描写も苦手な人はキツいかもしれませんけど、この感覚は一度は味わうべきでしょう。ただし、ストーリーに過剰な期待は禁物。

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ブルックリン 他

グッバイ、サマー ★★★★★★☆☆☆☆
ミシェル・ゴンドリー監督の自伝的青春映画。
女の子のような顔立ちで背が小さく、"ミクロ"と呼ばれるダニエルが、変わり者の転校生テオと親しくなり、手作りの車で旅に出ることになります。
所詮は子どもの冒険なので大規模なものではないし、ほとんど成功しないんですけど、二人が真面目に計画を立てている様子は微笑ましくもあります。多くの大人が自分の青春期と重ねて甘酸っぱい気分を味わったり、ほろ苦い気分になったりできるんじゃないでしょうか。
僕もダニエル側の人間で、ひょんなことからタイプの違う友人と出会って新しい世界を垣間見た経験があります。大人の目線からだと顔をしかめたくなるような関係性だったし、理由があったのか思い出せないほど自然に付き合いもなくなってしまったんですが、今でも時折思い出すことがあるくらい印象的な友人でした。観賞中はずっとそんな思い出に浸ってしまいましたね…。
ただ、微笑ましさはあれどハラハラ感はないので、中盤以降はダレてしまったりも。これならもっとコメディ色が強くてもよかったな。

◆ミシェル・ゴンドリー監督作品の評価
「ムード・インディゴ うたかたの日々」 ★★★★★★★☆☆☆

ブルックリン ★★★★★★★★☆☆
アカデミー賞の作品賞にまでノミネートされながら、あまり興味が沸かなかった作品。しかし、いざ観賞してみればノミネートも納得の良作でした。この年の作品賞ノミネート8作品のうち6作を観たことになりますが、個人的には「マッドマックス 怒りのデスロード」に次いで好きです。
主人公は母や姉と暮らしていたアイルランドを離れ、ニューヨークのブルックリンに移住することに…。最初はホームシックで泣き暮れていたものの、仕事に慣れ、目標や恋人もできて、次第に新しい生活を楽しめるようになります。手紙のやり取りから感じられる姉妹の絆や、善人にも悪人にも見えるリアルな登場人物たちが作品に最高の質感を与えてくれています。主人公が田舎育ちの素朴な女性というだけでなく、彼女のしたたかさやいやらしさまでも描かれているので、共感も反感も抱けるのもいいですね。10代の頃から演技に定評があったシアーシャ・ローナンの魅力が最大限に発揮されています。
それにしても、淡々とした地味な映画なのになぜこれほど深みがあるんだろうと思っていたら、「アバウト・ア・ボーイ」などの原作者、ニック・ホーンビィが脚本を務めているんですね。ニックは「17歳の肖像」の脚本も手掛けていたし、僕好みの作家だなぁとつくづく思わされました。

◆ジョン・クローリー監督作品の評価
「BOY A」 ★★★★★★★★☆☆

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ベイビー・ドライバー

babydriver.jpg

今年7本目の劇場観賞。年内は他にどうしても観たいと思えるほどの作品がないので、早くも見納めかもしれませんが、年間に7回も劇場に足を運ぶのは2012年以来のことですし、良作多めで満足しています。

というわけで、「ダンケルク」に続く2週連続の映画館は「ベイビー・ドライバー」。最初はノーマークでしたけど、ネット上での評判があまりによかったので観てきました。

何といってもゴキゲンな音楽に乗せて繰り広げられるカー・アクションが魅力的。冒頭の銀行強盗のシーンからテンションは最高潮に達していますし、その直後、主人公がカフェにコーヒーを買いに行くシーンだけでもこんなに見栄えのするものに仕上がるなんて!
幼い時に遭った交通事故の後遺症で耳鳴りが止まず、音楽を聴いている時だけそれが収まるという設定も素晴らしいですね。これによって、ミュージカルが批判される際に時折言われる、日常の中に突然歌が入り込む不自然さも解消されています。
「Tequila」に合わせて繰り広げられる陽気な銃撃戦は問答無用にテンションが上がりますし、バリー・ホワイトの「Never, Never Gonna Give Ya Up」のムーディーな曲とは全く異なる緊張感溢れるシーンなど選曲も絶妙で、よく引き合いに出されている「ラ・ラ・ランド」よりは、「パルプ・フィクション」をはじめとするタランティーノ作品との共通項をたくさん見つけました。

キャストもケヴィン・スペイシーとジェイミー・フォックスくらいしか知らなかったんですけど、主演のアンセル・エルゴートは犯罪組織に属する善人というキャラクターがしっくりきてよかったです。女優陣はヒロインのリリー・ジェームズよりも、セクシー且つクールなエイザ・ゴンザレスのインパクトの方が上回っていました。

正直、ストーリー性は少し弱く、アクションが少ない中盤はダレるというこの手の作品にありがちな問題点も抱えてはいるんですけど、終盤の盛り上がりに助けられて後味はかなり良し。コアな映画ファンに支持される監督というイメージだったエドガー・ライトも、今作で一般層にも浸透したんじゃないでしょうかね。次回作にも注目していきたいと思います。

★★★★★★★★☆☆

◆エドガー・ライト監督作品の評価
「スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団」 ★★★★★★★☆☆☆

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プロフィール

いぬふく

  • Author:いぬふく
  • 趣味は多数。テニスは主にWTA(女子テニス)、音楽はアメリカンR&BとHIPHOP、ゲームと映画、読書はジャンル問わず。
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