Damn. / Kendrick Lamar



大傑作の「To Pimp A Butterfly」を経て、新たなテーマを掲げた4thアルバム。
とはいえ、人種差別を前面に出している点は変わらずで、黒人に差別的な態度を取る警察に対し敵意すら露わにする場面すらあります。
FOXチャンネルのコメンテーターが「若い黒人に悪影響を与える」と話したことで対立もあったようですが、僕個人としてはこの対立に関してはどちらにも理解を示したいところではあります。アメリカに根深い黒人差別があるのはこれまでのヒップホップ作品を聴いていても明らか。Beyonceも昨年の「Lemonade」でその姿勢を出していましたけど、Kendrickの方が詞もビデオもより過激な分、誤解を招き「警察=悪」というイメージを定着させてしまう危険性は確かに孕んでいると思います。

ただし、彼は決して敵意だけを表現しているのではなく、その中で自分の中に潜む悪や弱さと葛藤しているんですよね。それは彼個人の問題なのか、黒人だからなのか、それとも人間として当たり前のものなのか。前作にあった詞の二面性(性と社会的なテーマが同時に潜むなど)は薄れましたし、前作に比べてラップ自体もアグレッシブで生々しく感じられますけど、この葛藤を表すためには最適な手段でしょう。

プロダクションの面ではだいぶシンプルになりました。個人的にはジャズ色を強く取り入れた前作の方が好きですね。Mike WiLL Made-Itが手掛けた「(2)DNA.」と「(8)Humble.」がキャッチーなのが災いして、他の曲のインパクトが薄れてしまっているような…。Rihannaと組んだ「(6)Royalty」でさえ、期待値には届きませんでした。
現時点でも聴き応えのあるトラックは揃っていますし、もっと詞を読み込んでいけば前作同様に評価が上がる可能性も残していますが、前作がよすぎたために物足りなさも感じるのも確かです。

★★★★★★★☆☆☆

◆前作の評価
「To Pimp A Butterfly」 ★★★★★★★★★☆

「DNA.」(US4位、UK18位)

テーマ : HIPHOP,R&B,REGGAE
ジャンル : 音楽

Music Review(2017年5月)

そろそろKendrick Lamarの新作のレビューも書きたいところですけど、やはり詞を熟読した上で感想を書きたいので、国内盤のリリースを待って単独記事にする予定です。

More Life / Drake ★★★★★★★★☆☆
本人曰く、これはプレイリストだそう。普通のアルバムやミックステープとどう違うの?という思いもありますし、正直オリジナルアルバムと呼ぶよりもコンセプトが薄く価値が下がってしまうような気もしますが、実際はかなりの充実作です。「If You're Reading This, It's Too Late」はハードすぎ、「Views」はソフトすぎてダメだったんですが、今作はちょうどいい塩梅なんですよ。
ゲストはKanye Westのような大物から、PartyNextDoorやSamphaといった人気上昇中のアーティストまで多彩。「Teenage Fever」では、交際も噂されるJennifer Lopezの「If You Had My Love」をサンプリングするなど遊び心も感じられます。傑作2ndアルバム「Take Care」の衝撃にはさすがに及ばないものの、ヒップホップだけでなくソウルファンや昨年の「One Dance」やRihanna「Work」にハマったダンスホール好きにまでアピールし、なおかつちゃんと独自性を出してくるあたりさすがとしか言い様がありません。
特に「(3)Passionfruit」はこの夏中ずっとリピートし続けたいトロピカルなトラックです。

◆前作の評価
「Views」 ★★★★★★★☆☆☆

「Passionfruit」(US8位、UK3位)の音源


Memories: Do Not Open / The Chainsmokers ★★★★★☆☆☆☆☆
昨年の全米シングルチャートを制した「Closer」で一躍トップアーティストとなったユニットの1stフルアルバム。輸入盤は「Closer」は未収録ですけど、「Paris」や、Coldplayと組んだ「Something Just Like This」といったヒット曲が収録され、当然のようにこちらも全米1位に輝きました。
確かに耳障りは悪くないです。けど、率直に書いてしまうと、どれもほとんど同じに聴こえるんですよね。この数年間で数々のEDMヒットが出ましたが、それらと比較しても特に秀でている点が見当たりません。強いて言えばEDMには珍しくしっとりとしたトラックが目立つところなのかもしれませんが、疾走感のある「(2)Break Up Every Night」が本作のベストトラックだと思っている自分とは単に相性が悪いだけかも。
ちなみに、僕はApple Musicで聴いただけですけど、購入する方は昨年のヒット「Closer」と「Don't Let Me Down」が入った国内盤をオススメします。

「Something Just Like This」(US3位、UK2位)。PVがないのでリリックビデオです

テーマ : アルバムレヴュー
ジャンル : 音楽

Music Review(2017年4月Part2)

Future / Future ★★★★★★☆☆☆☆
2月に2週連続でリリースされたFutureのアルバム。先行のこちらは従来のファンに向けた音で固められていますね。というわけで、トラップ系のサウンドが好きならループの中毒性が高い「(7)Mask Off」をはじめ、オススメ曲多し。個人的にはトラップ感薄めの「(4)Draco」の方が好きなんですが、こちらは中毒性があまりないか…。全体的には安定感のある作りです。
ただ、好みの問題なんですけど、やはり彼の声はクセが強すぎて、曲単体では問題なくてもアルバムを通してだと前半でお腹いっぱいになってしまい、後半は聞き流してしまいがちなんですよね。なので今回もヘビロテには至らず。

「Mask Off」(US5位、UK24位)


HNDRXX / Future ★★★★★★★☆☆☆
彼の近作のほとんどを手掛けていたプロデューサー、Southsideの名前は今回「(3)Lookin Exotic」の1曲のみ。RihannaやThe Weekndといった豪華ゲストが参加したこちらは、上の作品に比べるとだいぶ間口が広い作りです。Future自身もラップよりも歌の割合が増して新鮮さもしっかり味わえますし、これまで彼の作品に馴染めなかった自分のようなリスナーを取り込むにも最適な1枚に仕上がっています。
ただ、Futureのアルバムとしては新鮮なんですが、これを彼のアルバムとして受け入れることができないファンも大勢いるでしょう。The Weekndがフィーチャーされた「(2)Comin Out Strong」は良曲なれど完全に彼の曲になってしまっていてFutureはゲストのよう。Rihannaの「(15)Selfish」も同様です。このあたり、フィーチャリングアーティストとしてキャリアを積んだことが仇となってしまっているような気はしますね。

「(5)Use Me」

テーマ : HIPHOP,R&B,REGGAE
ジャンル : 音楽

Tremaine The Album / Trey Songz



Treyくんの7thアルバムは、美女十数名と生活を共にするという内容の「Tremaine The Playboy」というリアリティ・ショウと連動した内容。コンセプト・アルバムという点と、先行シングルを聴く限りでは嫌な予感しかしなかったんですが、なかなかまとまりがあっていいじゃないですか。少なくとも前作「Trigga」や前々作「Chapter 5」よりは好きですね。個人的に、この人はヒップホップテイストの強いトラックよりも繊細でスムーズなR&Bの方が圧倒的に魅力的に映っていて、「Yo Side of Bed」(「Ready」収録)や「What's Best for You」(「Trigga Reloaded」収録)は珠玉の一曲だと思っているので、オーソドックスなR&Bが楽しめるのはかなり嬉しいところ。

とは言っても、このアルバムで一番気に入っているのはアップの「(10)1 X 1」なんですけどね。こういう疾走感のある楽曲がアルバムの後半に入ってくると、集中力が最後まで持続します。

詞の内容はこれまでと同路線。ほぼ全編に渡ってセックスについて歌いつつもファンの子にも手を出しちゃう「(3)#1 Fan」や、自らのプレイボーイっぷりに悩む「(5)Playboy」、動物のように盛り合う「(9)Animal」など、冷静に聴くとツッコミどころ満載なのもR&Bの面白さ。まぁ、過去にはコンドームを買いに走る「Store Run」といった珍曲を書いた人なので、この程度では驚きませんがね。

アップだろうがスロウだろうが、彼のヴォーカルの乗り方は実にスムーズ。R&Bのメインストリームでここまで万人受けする声の持ち主は、Usher以来でしょう。R&Bには欠かせないエロ要素を混ぜながらもR.Kellyのような変態臭はないので、世の男子は共感しやすいでしょうし、女子もすんなり世界に浸れるんじゃないかな。
コンセプトアルバムながら従来のイメージを覆すような要素がないのは物足りませんけど、王道のR&B界では最も現役感の強いアーティストだと思っているので、あと5年くらいはこの路線で突っ走っていってほしいものです。

★★★★★★★★☆☆

◆前作のレビュー
「Trigga」 ★★★★★★★☆☆☆

「(7)Song Goes Off」

テーマ : HIPHOP,R&B,REGGAE
ジャンル : 音楽

Music Review (2017年4月Part1)

Gang Signs & Prayer / Stormzy ★★★★★★★★★☆
グライムシーンの新星と言われる23歳のデビューアルバム。北米以外のブラックミュージックには疎く、UKとなると何となく遠ざけてしまう僕ですが、何の気なしにApple Musicで試聴してみたら大ハマり。CDまで買ってしまいました。
「(5)Big for Your Boots」はゴスペル要素を含んだラップソングということで、Kanye Westの「Jesus Walks」を思い出しましたが、Stormzyの場合はその高速ラップが大きな特長。必然的にアグレッシブなトラックの方がハマる気がします。個人的なベストは「(2)Cold」。音やヴォーカルの重なりが増すとともに緊張感と高揚感が右肩上がりに…。
メロウなトラックもかなりの数、収録されています。正直、こちらは少し目新しさに欠けるかなという印象は持ったものの、クオリティはどれも高く、デビュー作とは思えない見事なバランス配分。歌もラップもできるMCは当たり前になっていますけど、ラップのピッチも自在に変えられるのがこの人の強みで、アルバム通して飽きずに聴けるんですよ。
ま、グライムというジャンルがまだよく解っていないんですけど、ヒップホップが好きなら新しいジャンルと身構えることなく入り込めるはずです。日本はおろか全米デビューもまだですけど、間違いなく2017年を代表する作品です。



「Big for Your Boots」(UK6位)


DROGAS Light / Lupe Fiasco ★★★★★★★★☆☆
デビューから傑作を2作続けたものの、その後は迷走気味だったLupe Fiasco。レーベルとの確執や引退発言などネガティブなニュースが続きましたが、インディからながら無事に新作リリースとなりました。しかし、インディでも盟友Soundtrakkとのタッグは続いていてクオリティに問題はなし。バックコーラスを活かした都会的なトラックなど、Lupeらしさがきちんと出たお気に入りの一枚です。
夜明けを想起させる「(2)NGL」からほぼ歌モノの反則すれすれ「(11)Pick Up The Phone」まで、バラエティに富んだ楽曲がズラリと並んでいます。特に(2)はそれだけでアルバム全体を良作認定したくなるほど好きですね。Stormzyもそうですが、2曲目がいいと全体の印象がよくなります。
ただ、復活といえば聞こえはいいですけど、道を外れたところから元に戻っただけなので、デビュー時から進化が見られるかと問われれば肯定もできないんですよね。一応本作は3部作の第一章という位置付けらしいので、今年中に出ると言われている次回作「DRODAS Waves」のリリースでさらに化けることを期待しています。



◆前作の評価
「Tetsuo & Youth」 ★★★★★★★★☆☆

「(5)Jump」

テーマ : HIPHOP,R&B,REGGAE
ジャンル : 音楽

プロフィール

いぬふく

  • Author:いぬふく
  • 趣味は多数。テニスは主にWTA(女子テニス)、音楽はアメリカンR&BとHIPHOP、ゲームと映画、読書はジャンル問わず。
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