怒り (上) (下)/ 吉田修一

 

図書館で予約待ちしていたものをようやくレンタル。上巻は年末年始に読みましたが、感想を書く前に下巻も読み終えてしまったので、まとめてレビューします。

殺人事件を起こし、整形手術をして逃亡している山神一也という男を追い続ける警察。その警察の元に、容疑者に似た男がいるという情報が寄せられます。物語は、新たな土地に移り住んできた山神に似た3人の男と、彼らの生活を支える人々を中心に進みます。

3つのエピソードが代わる代わるやってくるので飽きずに読めるんですが、個人的には同性愛者の優馬と直人のエピソードが断トツで面白かったですね。二人は恋人同士でもあり、飼い主とペットの関係のようにも見えます。優馬は直人に自分の部屋に住まわせ携帯電話を与えても彼の過去を知らないし、自分が働いている間にどこで何をしているかも知らない…。猫のように自由に生活しているけど、たまに思いもよらぬ優しいことばをかけてきたり、入院中の優馬の母親を見舞いに行ったりと、なかなか見事なツンデレ具合を見せるので憎めません。いつの間にか優馬に感情移入してしまいました。

人は好感を持ってしまえば、素性の判らない相手でも受け容れてしまうものです。
優馬が、心を許した直人に「お前のことを信じてない」というようなことを言いますが、そう直接言えることは逆に相手のことを信じているということなんだと自覚します。この文章に大きく同意。直人が姿をくらませても騙されていたとは思わずに、ただただ彼の帰宅を待ち続けるなんて健気じゃないですか!
もちろん、一旦疑いを持ってしまうと疑念は膨らんでいく一方で、優馬とは違い相手を信じることができない人間も出てくるわけですが、それはそれで共感できました。

舞台が3つもあるためどうしても登場人物が多くなりすぎて憶えるまでに時間がかかるのが難点ですし、タイトルの"怒り"の正体が最後まではっきり明かされない点は個人的に嫌でしたけど、人を信じることを軸にしながら犯人や動機が終盤まで判らないサスペンス要素も含んでおり、昨年冷めていた読書熱を一気に再燃させてくれるパワーを持ったエンタメ小説でした。
吉田修一作品としては「悪人」と並ぶお気に入りです。

◆吉田修一作品の評価
「悪人(上)」
「悪人(下)」
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テーマ : 読書感想文
ジャンル : 小説・文学

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