呪われた腕 / トマス・ハーディ



大学の英文学の講義で名前だけは知っていたトマス・ハーディ。この度、新潮文庫の「村上柴田翻訳堂」として復刊したので、短編からデビューすることにしました。

本作は8つの短編が収録されているんですが、悲劇的というか皮肉な運命が待ち受けているという点で共通していますね。ただ、終わり方がどれもモヤッとしていて読後感がいまいちなのが残念。同じ悲劇的なラストでも、ブッツァーティなどは上質なサスペンスに触れたようなドキドキ感が味わえたんですが、ハーディの方は「こうなりましたとさ…」と登場人物たちのその後を語るだけにとどまっていて、最終的に主人公の心情すらも脇に追いやられているように思えてしまうんですよね。

しかし、その展開に慣れてくるとこの本は一気に面白くなってきます。僕がそうなったのは、表題作「呪われた腕」あたりから。「呪われた腕」は短編でも割とボリュームがあるんですが、ハーディはラストで余韻を残すタイプではないから、それなりに長い方が物語に入りやすくこちらの想像が入り込む余地ができるんでしょう。

その他では、妹の婚約者と恋仲になってしまう「アリシアの日記」や、会ったこともない詩人に恋をし、暴走してしまう人妻を描いた「幻想を追う女」といったところがお気に入り。どの話も客観的に見れば主人公の考えが甘くて選択を誤ってしまっているようにも見えるんですが、思い込むと気が済むまで突き進んでしまう女性特有の行動(と、頭に血が上ると安直に動いてしまう男性の行動)が表現されていて興味深かったです。
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テーマ : 海外小説・翻訳本
ジャンル : 小説・文学

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