キネマの神様 / 原田マハ



大きな再開発事業の途中に退職してしまったキャリア・ウーマン、歩は、ギャンブル好きの父親が借金を抱えたまま心筋梗塞で倒れるといった苦境に立たされます。無事に退院した父親が再びギャンブル漬けにならないよう歩と母親が考えたのは、父親のもう一つの趣味である映画に没頭させること。さらに歩自身も老舗映画雑誌「映友」の編集部に再就職したこともきっかけになり、映画を通しての父娘再生スタートしていくことに…。

この作品が最も盛り上がるのは、父親がゴウというハンドルネームで映画ブログを更新し始めるところ。彼が書いた「フィールド・オブ・ドリームス」の感想にローズバッドという謎の人物が反論のコメントを残したことを発端にブログのファンが増え始め、契約を結んだ「映友」の活気も戻るわけですが、単なるサクセスストーリーで終わらせず、家族愛を取り戻すハート・ウォーミング・ドラマになっています。

そして、有名映画を実名で使用した、読者の映画愛が試される作りと、父の友人であるテラシンが経営する名画座の温かみも本作の魅力の一つ。

ただ、個人的に期待していたような感動には包まれませんでした。
その理由の一つには、問題を抱えていながらもどこか憎めない登場人物ばかりで深みが感じられない点があります。本当なら、悪人のようでも彼らが抱えている問題を描くことで、同情したり愛着を持てるというのが理想なんですけど、本作ではすべてを文章で表現してしまっているためにこちらの想像力が掻き立てられないんですよ。
さらに、映画自体の魅力もさほど伝わってこなかったような…。物語の軸となる「ニュー・シネマ・パラダイス」はほっといても傑作認定されるような映画ですし、他の未見の作品もこれを読んだことで興味が沸くというのはほとんどありませんでした。「楽園のカンヴァス」では美術に疎い僕でもまるで美術館へ足を運んだかのように光景が浮かんだだけに、もう少し惹き込んでくれたらなぁという思いは強く残りました。ま、このあたりは映画の好みの問題でもあると思うんですけどね。

◆原田マハ作品のレビュー
「楽園のカンヴァス」
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テーマ : 読書感想文
ジャンル : 小説・文学

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