スクラップ・アンド・ビルド / 羽田圭介



仕事を辞めて求職中の20代後半の青年、健斗。
頻繁に「死んだらよか」とこぼす祖父に安らかな死を与えようと考えるわけですが、その手段が過剰な介護によってじわじわと弱らせること。使わない身体は徐々に弱り、やがて死に至るという理論で、ある意味直接的な殺害計画よりも怖さが宿っています。
さらに怖いのは、健斗が決してダメで愚かな人間ではないこと。彼は所謂ニートなんですが、資格試験の勉強をしながら就職活動も筋トレも計画的にこなすなど、自分が決めたことに対してはストイックにやり抜く信念を持っています。そして、殺人はいけないと頭では理解していても、心では何も感じていない…。このあたりの感情の欠如が作品自体も冷ややかなものにしていますが、同時に、弱っていく祖父を横目に、自らは身体を鍛え上げていくことで生を実感するという対比がなかなか面白いですね。

前半は老人介護の実態をテーマにした作品かと思っていましたが、実は現代の人間の生き方がリアルに描かれていました。主人公だけでなく、その母親や姉の介護に対する考え方も利己的で、共感はできないけどフィクションとは言い切れない説得力があります。
映画名など固有名詞が頻発する文章は、想像しやすい代わりに、賞味期限の短さを感じさせますが、この作品においては現代性を感じさせるのに役立っています。
読んでいて不快に思うこともあるものの、これまでにない角度から切り込んでいて、個人的にはかなり楽しめました。
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テーマ : 読書感想
ジャンル : 本・雑誌

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