廃用身 / 久坂部羊



三浦しをんの「三四郎はそれから門を出た」で紹介されていて、以前から気になっていた一冊。

"廃用身"とは、麻痺で動かず回復の見込みのない手足のこと。その廃用身を治療や介護のために切断するというアイデアを思いついた一人の若き医師、漆原を中心にした物語。果たしてそれは、画期的な最新医療なのか、自然の摂理に反する人外行為なのか…。

この作品の優れているところは、身体面の描写が具体的なこと。
廃用身を切断したことによって手の付けられなかった床ずれが治ったり、体重が軽くなったことで活動的になったなどと書かれると、そういうメリットもあるんだ!とうっかり納得させられそうになりました。しかし、施術を受けた患者があまりに前向きなことばかり発言しているように書かれているため、何だか通販番組を観ているような気分にもなって次第に懐疑的になっていきます。
何の予備知識もなく読み始めたため、終盤まですっかりノンフィクションのルポルタージュだと思い込んでいたんです。そして、この時点で、僕はすっかりこの本に浸かってしまいました。

治療自体は順調でしたが、やはり衝撃的な内容のため、漆原医師は徐々にマスコミの餌食になることに。悪魔の医師と糾弾されながらも自らの信念の元働き続けてきた彼も、ある衝撃的な事件をきっかけに精神を病んでいきます。そしてさらに衝撃的な結末へ…。

正直、これがフィクションでホッとしました。
が、10年後、20年後にこれが当たり前になっていないとも限りません。親の介護を真剣に考えなければならない年齢になった今だからこそ読んでよかったと思える部分もありますし、もちろん自分自身も介護を受ける時が来るでしょう。現状では、もしAケアという治療法が実在していたら自分はそれを受け容れることができるのか、と問われれば今のところ答えは「No」です。しかし、実際に手足が言うことを聞かなくなったら切り捨てたくなるかもしれません。幸せな老後を送るために何かを犠牲にすべきなのか、自分の倫理観とも葛藤しながら夢中で読んだ一冊でした。
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テーマ : 読書感想文
ジャンル : 小説・文学

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