女のいない男たち / 村上春樹

女のいない男たち女のいない男たち
(2014/04/18)
村上 春樹

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「女のいない男たち」といっても、別にモテない男について書かれた本ではありません。一人の女を深く愛し、彼女に去られてしまった男たちが主人公。これまで数々の喪失を描いてきた筆者には何ら珍しいテーマではありません。そのせいか、全体的に既視感が強い短編ばかり。「イエスタデイ」や「木野」は過去の長編の一部を切り取った印象が残ります。

とはいえ、どの作品もそれなりに楽しく読めました。
「イエスタデイ」に登場する主人公の友人、木樽は、田園調布育ちながら完璧な関西弁を操る陽気な男。遠距離恋愛中の恋人が見知らぬ男と浮気しないように、主人公に恋人をあてがうという驚くべき行動に出ます。自分には到底理解できません。でもこれも春樹作品では珍しくないんですよね。作品自体は残念ながら消化不良で終わってしまうんですが、一見軽そうでいて実は繊細な神経の持ち主の木樽に好感を持たないわけにはいきませんでした。

個人的ベストは「シェエラザード」。
事情があってハウスの中から出られない主人公のもとに。生活の世話とベッドの相手として訪れる女性。彼女の高校時代の思い出話が核となるわけですけど、その内容が衝撃的。片思いの相手の部屋へ忍び込み、彼の持ち物を一つずつ持ち去り、代わりに自分の持ち物を目立たない場所へ置いて帰っていたとか…。
正直なところ、自分も学生時代に同じような被害に遭った(と言っても机に置いていたノートにメッセージを書かれただけですが…)ことがあり強烈な嫌悪感を抱いた記憶があるので、この女性もやはり好きにはなれません。しかし、逆の立場に立つとこういう秘密を抱える喜びと興奮は十分に理解できます。背徳的だけどドキドキできる。主人公も話の続きが聞きたいという欲求が毎日を生きる原動力になっていたわけで、実際、この短編が最も読者を引きつけるパワーを放っていたのは間違いないでしょう。

自分の中では村上春樹はやはり短編より長編という意識は変わっていません。「1Q84」で蘇った村上春樹への興味も再び落ち着いてしまいました。それでもまだ枯れるには早すぎます。この短編集が次回の長編作品のヒントになることを信じて、また何年も待とうと決意しました。
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テーマ : 読書感想文
ジャンル : 小説・文学

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