斜陽 / 太宰治

斜陽 (角川文庫)斜陽 (角川文庫)
(2009/05/23)
太宰 治

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タイトル通り、没落する貴族を描いた作品。

これまでに読んだ太宰作品ほど感情移入度は高くありませんでした。女性が主人公であることが最大の要因だと思います。惚れた相手に己の欲望を曝け出した手紙をしつこく送りつけるかず子に、女の執念深さを見てゾッとします。
淡々としていることもあり、中盤まではなかなか物語に入り込めなかったんですけど、終盤に差し掛かる頃にはすっかりその世界に魅入られてしまいました。

本作にはかず子の他に、母と弟、そしてかず子が惚れた上原という男が登場しますが、没落していく4人に太宰自身の姿が投影されているよう。
薬物中毒を抑えるためにアルコールに溺れていく弟の直治は晩年の太宰に重なり、そのためか、彼の遺書からは滅茶苦茶内容でいて妙な説得力が発せられています。没落しても、死を覚悟しても、全員が最後まで貴くいたいと願うパワー。死がまとわりついて救いようのない世界に生きているようでありながらも、逞しさを感じさせる内容は、2月に朗読劇を観て原作も読んだ林芙美子の「骨」を思わせるものがありました。滅びにも美しさがあるんだということを目の当たりにした気分。

「人間失格」のようなインパクトはないので、これを最初に読んでいたら太宰治を好きになれたかどうかは分かりません。それでも、若い時に読んでいたらここまで魅力を感じられなかったであろうし、もっと歳を重ねればより面白く読めるだろうという確信を持てる…、つまり時間を置いて何度も読み返したくなる一冊でした。

◆太宰治作品の評価
「ヴィヨンの妻」
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テーマ : 読書感想文
ジャンル : 小説・文学

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