ひとさらい / シュペルヴィエル

ひとさらい (光文社古典新訳文庫)ひとさらい (光文社古典新訳文庫)
(2013/11/08)
ジュール シュペルヴィエル

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子どもを自宅に連れて帰り、自分の子どもとして育ててしまうというとんでも設定の物語。
しかし、ビグア大佐が連れ帰るのはそれぞれ家庭に問題を抱えた子どもばかりで、大佐の家では何不自由のない生活をさせているし、彼らが帰りたいなら無理に引き止めることもしない。
怖ろしげなタイトルとは裏腹に、大佐に狂人じみた言動は特に見られず、少女マンセルに惹かれ始めてからは自意識過剰なくらいのあたふたっぷりが可笑しくなるほど。自らの行動に若干の疑問を抱きつつも、使命感にも燃える男。圧倒的な父性を持ちながらも、夫でもあり一人の男でもある、そんな人間らしさが一冊に凝縮されています。

しかし、彼がしていることは慈善奉仕なんだろうか…。
本作は大佐やさらわれた子どもたちだけでなく、子どもの親や大佐の妻の目線で語られることもあり、その場面場面で大佐の印象が大きく変わってきます。親からすればどんな理由であってもひとさらいであることには変わりありません。物語上でも息子を奪われて苦悩する母親の姿が描かれています。
視点が変わることで我々はビグア大佐を責めたくなったり同情してみたり、様々な感情が揺さぶられるんですね。

唯一ちゃんとした手続きを踏んで(?)養うことになったマルセルとの出会いが、初めて大佐を苦悩させることになるというのも面白いところです。
10代の少女との壁一つ隔てたプラトニックな繋がりが本作最大の魅力。そして愛情と苦悩の末にはまさかの結末が待っています。
善悪をはっきりつけない、モヤッとした面白さはフランス文学的で、その世界観はとても個性的でしたが、特別な魅力を持つ人物もいない上に、事件らしい事件もほとんど起きないので物足りなさも残りました。長くない話なので、少しずつ読み進めるよりも時間のある時にゆっくりその世界に浸る方が合っているかもしれません。
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テーマ : 海外小説・翻訳本
ジャンル : 小説・文学

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