月と蟹 / 道尾秀介

月と蟹 (文春文庫)月と蟹 (文春文庫)
(2013/07/10)
道尾 秀介

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初・道尾秀介。
直木賞受賞作…と言っても5度目の候補となると功労賞的な意味合いで、一番面白い作品とは限らないように思うんですが、結局探そうとするとこういう代表作を手に取ってしまうんですよね。
世間の評判を聞く限り、道尾作品としては珍しいタイプの物語のようなので、いずれ別の作品も読んでみるつもりですけど、とりあえずこの作品はそれなりに楽しめました。

主人公は10歳の少年、慎一。学校で親しくなった春也との楽しみは貝から炙り出したヤドカリをヤドカミさまに見立て、願い事をするということ。二人は家庭に問題を抱え、学校でも孤立している身。彼らの距離が縮まったのは心が通い合ったというよりも孤独を感じずにいられるというネガティブな理由によるものです。
途中から親しくなる鳴海とも、慎一は複雑な事情によってある地点からなかなか距離を縮めることができません。

平凡な家庭で育った自分には、小学生がここまで心に闇を抱えているというのは想像し難いものがあります。しかし、子どもって純粋のようだけど、生まれながらに罪を持っているから、妬みもするし、時には残酷な行為に及んでしまったりもするんだよなぁ。
何気なく始めたヤドカミさまへの願い事が叶ってしまった時の恐怖心と同時に芽生える興奮は、闇を抱えた小学生にとっては最高の刺激と現実逃避だったんでしょう。物事の良し悪しよりも欲求に忠実に突き進む様は浅はかな分、余計に怖ろしく悲しいものがありました。

全体的に、大きな事件のない淡々とした展開。特に中盤までは何も起こらないなので、盛り上がりを期待すると物足りなさを覚えるかもしれません。それでも、少年時代に友人と秘密を共有する背徳的な喜びなどは共感できる部分も多く、そんな彼らの行く末が気になって後半はページをめくる手が止まりませんでした。
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テーマ : 読書感想文
ジャンル : 小説・文学

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