タタール人の砂漠 / ブッツァーティ

タタール人の砂漠 (岩波文庫)タタール人の砂漠 (岩波文庫)
(2013/04/17)
ブッツァーティ

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「七人の使者」「神を見た犬」と衝撃的な短編を過去に読んできましたが、長編は初めてです。文庫化してくれた岩波書店に感謝!

砂漠の砦に配属されたドローゴはすぐに転任を望むも受け入れてもらえず、退屈な日常から逃れるためにタタール人が襲来してくるのを待ち続ける…。
アングスティーナやマリアなどの細かいエピソードはあれど、基本的には何もイベントが起こりません。数十年間ひたすら待つのみ。そしてあれだけ待ったのに、結局は悲しい結末に繋がっていくんです。

何かを待ち続けているうちに、取り返しのつかない歳月が経過してしまうというのは不条理だけれども、これはすべての人間の人生の縮図でしょう。単調な生活が習慣になり、無限にあると思われた時間が残り少ないものになっていることに後になって気付かされます。ある程度の年齢に達した人ならドローゴを自分自身に重ね合わせて読むことが容易にできるはずです。
淡々とした中にも恐怖と教訓を共存させてしまうあたりがブッツァーティの最大の魅力。

よく考えてみると、見た目やキャリアには差が出ても、歳を取るということだけがすべての人間に平等に与えられているんですよね。なので、人生の目標に向かって突き進んでいる10代や20代の若者よりも、肉体的に衰え始め生き方が不自由になっていく40代以降の方が面白さを実感できるのかもしれません。こればかりは、いくら知識や経験が豊富でも若いうちに身を持って実感するということはそうそうできないはず。本作で流れる歳月には怖さしか感じませんでしたが、本作を理解する上では歳月は必要なわけです。10年後に読んだらさらに新しい発見ができるような気がします。

でもやっぱりブッツァーティは短編の方が面白いかな。テーマはさほど変わりはない分、テンポが劣り冗長に感じてしまうんです。彼の持ち味であるジワジワと染み入ってくる恐怖は短編での方が凝縮されていてより強く感じられました。
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テーマ : 読書感想文
ジャンル : 小説・文学

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