共喰い / 田中慎弥

共喰い共喰い
(2012/01/27)
田中 慎弥

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芥川賞受賞会見での「もらっといてやる」発言。話題作りじゃないのかと思いつつも気になって、結局読んでしまいました。
で、読み終わって感じたのが、話題作りとまではいかないまでも、あの発言は彼なりのジョークだったんだなということ。本心で言ったとは思えないくらい、作品は理性的で真っ当な内容でした。

父親とその愛人と共に暮らす17歳の遠馬は、セックスの時に暴力を振るったため、恋人の千種から拒絶されるようになってしまう。その暴力性は父から受け継いだもの。そしてそれが夏祭りの日の事件を産み落とした…。

ものすごく簡潔に説明するとこんな感じ。
感情が前面に出さず、風景描写に力を入れていることが、かえって遠馬の気持ちを如実に表しているようで、とても興味を惹かれました。他の人の感想を読んでみると、心情描写が少ないとも言われていましたけど、風景や人物の行動から心情が窺えるというのは読み手の想像力に委ねられているようで好きです。
書き手にもそれなりの文章力が必要とされるでしょうしね。
父親の出番がそれほど多くないのに、遠馬の様子や他の人物との会話から彼の人物像がはっきり見えてくることからも、その巧みな文章力が感じられました。

生臭くじっとりと湿った世界で、ヒリヒリとして後味の悪い物語。決して好きなタイプではありませんし、冷静に考えてみると新鮮味があるわけでもありませんが、読み終わっても長い間心に残り続ける印象的な作品です。

同時収録は「第三紀層の魚」。こちらの主人公は小学6年生ですけど、表題作のような暴力性は潜んでいないため、より読みやすかったです。個人的には、こちらの方が気に入りました。
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テーマ : 読書感想文
ジャンル : 小説・文学

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