鉄のライオン / 重松清

鉄のライオン (光文社文庫)鉄のライオン (光文社文庫)
(2011/04/12)
重松 清

商品詳細を見る

2008年に発表された「ブルーベリー」が改題されて文庫化。
大学に入学してから、1980年代の青年期を振り返る、作者の半自伝的な小説になっています。ブルーベリーガム、吉野家、マリオとルイージ、村上春樹、ジミー・コナーズなど、80年代を象徴するキーワードを意図的に登場させているので、作者と同じ世代(50歳前後)の人なら自然と感情移入してしまうんじゃないでしょうか。かといって世代が違うと置いてきぼり…なんてことはなく、それぞれが自分なりのアイテムに置き換えて楽しめます。やっぱり大学に入って一人暮らしを始めると、自分を取り巻く環境がガラリと変わって新しい経験をたくさんするので、思い出は山ほどあるんですよね。

気に入ったのは、村上春樹の短編のような甘く切ない「マイ・フェア・ボーイ」や、「1973年のピンボール」を彷彿とさせる双子が登場するも、その悲哀を描いた「君の名は、ルイージ」、そして『見栄講座』に強い影響を受けたナカムラくんが可笑し悲しい「人生で大事なものは(けっこう)ホイチョイに教わった」の3編。

特に「~ホイチョイに教わった」は考えさせられるエピソードでしたね~。
ホイチョイ・プロダクションズや『見栄講座』の存在は全く知らなかったんですけど、「自分が幸せだと感じるのではなくて、人にそう思われることこそが本当の幸せ」というようなことを熱く語るナカムラくんに強い違和感を抱きながら、何だか物悲しくなりました。結局それって、人を見下したいだけじゃないのか?と。
でも逆に、自分基準の幸せに縛られて他人を不幸にする(とまではいかなくても迷惑を掛ける)例も見たことがあるだけに、どちらに対しても共感できない…。まぁ、『見栄講座』がどういうものか分かっていないだけに生じる迷いなんですかね。何にせよ、興味深いテーマではあります。

ただ、全体的にちょっとノスタルジーが前面に出すぎているかな。
確かに昔を懐かしんだりはできるんですけど、作者の意図が見えすぎるだけに、引いてしまう部分がありました。彼の他の作品でも同じように感じたことがあるので、これが重松世界ではあるんでしょうが、もう少しサラリと感動させてほしかったというのが本音。

◆重松清作品のレビュー
「その日のまえに」
「ビタミンF」
「流星ワゴン」
スポンサーサイト

テーマ : 読書感想文
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

見栄萌え

お久しぶりのコメントです。

いぬふくさんと同様に、ぼくもその、ナカムラさんが仰ったことに非常にピンときました!
いま、そーゆー価値観というか幸福観の決着をどーするのかって問題はまさに、かなりアツいんじゃないかと、ぼくは思うんですが。
例えば、テレビのあり方ひとつとってみても、ホイチョイを世に広めてホイチョイ的快楽を自給自足してる有り様はこれ、バブルそのものなわけで、いまも「自分のものではないしあわせ」が日本では膨らみ続けていると言う風にも考えられますよね。

そーゆーバブルがハジケるのかハジケないのかは知りませんが、いずれにせよ注目し続ける価値はあると思います。

というわけで、そんな興味深いテーマを扱っておるならば、作品をいくつか読んでも首をかしげることが多かった重松作品ですが、期待して読んでみようかなっ!

ホイチョイナカムラ

その世代じゃないから詳しくは分からないけど、バブルがハジけた時に幸福観は大きく変わったような気がする。
だから、自分の意識としては、昔に比べれば反ホイチョイ的な「自分基準の幸せ」が強まったのかな、と。
でも他人に羨ましがられたい人は多いだろうから、ホイチョイ思想が完全になくなることは絶対にないだろうね。

ナカムラくんのエピソードは一つだけで短いから、あまり期待すると肩透かしを喰らうかも。
お口に合わなかったとしても苦情は受け付けないので、あしからず…。
でも、結末はほろ苦くてよかったよ。
プロフィール

いぬふく

  • Author:いぬふく
  • 趣味は多数。テニスは主にWTA(女子テニス)、音楽はアメリカンR&BとHIPHOP、ゲームと映画、読書はジャンル問わず。
    詳しくはプロフィールページからどうぞ!
最近の記事
カレンダー(月別件数付き)
カテゴリー
最近のコメント
最近のトラックバック
ブログ内検索
リンク
RSSフィード
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる


いぬふくの最近観たDVD
いぬふくの今読んでる本