鴨川ホルモー / 万城目学

鴨川ホルモー (角川文庫)鴨川ホルモー (角川文庫)
(2009/02/25)
万城目 学

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映画版はキャストが魅力的だったので観るつもりだったんですが、原作は独特な世界に付いていけないような気がして敬遠してしまっていました。
でも読んでみたら至極真っ当な作りで驚きました。ある意味、健全な青春小説ですね、これは。

軸となるのは大学生らしい恋愛と友情。同じ恋愛でも一目惚れだったり、知らぬ間にすぐ近くまで来ていた恋だったり、甘酸っぱかったり嫉妬に苦しんだり…。ホルモーを通じて仲間と絆が芽生えたりする様子はスポーツ小説と共通する部分がありますね。
青春小説というと、その時代の自分を振り返ってセンチメンタルな気分にさせられることが多い中、これは自分と重ねることが全くなく、完全に新しい世界に飛び込んでいけたのがよかったです。

それにしても、安倍の情けなさったら! 一目惚れした女の子は、サークル内で最も嫌っていた男に取られ、親友はホルモーに敗れ突如チョンマゲ頭に…。そしてホルモー頂上決戦では女子生徒に顎で使われるハメに陥り、主人公としての面目丸潰れですよ。しかし、実直な性格に好感を持ち、そういう情けなさも含めて見守りたいという気持ちになれました。「応援したい」じゃなく、あくまで「見守りたい」ですが…。
登場人物の中ではスガ先輩が好きでした。この本ではほとんどの人物がどこかで展開を変える重要な役割を担っているのですが、スガ先輩は結構いいポジションにいながら、あまり介入してこない…。読者と同じく「見守る」立場に留まっていることで暖かい雰囲気を作りだしていたように思えます。戦う要素が混じっているにもかかわらず作品自体がぎすぎすしていないのは彼のおかげじゃないかな。

タイトルにもあるホルモーとは、オニと呼ばれる小さな生き物を使ってサークル同士で戦う競技です。ルール自体は戦闘部隊と補給部隊に指示を出して戦わせる、シンプルなシミュレーションゲームなんですけど、顔のパーツがなく、ただ茶巾絞りの"絞り"だけがあるオニと、また彼らに指示を出すにはオニ語でなくてはならないという特殊ルールが異様な光景を作り出しています。正直なところ、オニ語の存在なんかは作者の悪ふざけにしか思えない程度であって、そればかりだとウンザリするところでしたが、幸い本作はバトルシーンがメインじゃないので一安心。作品に個性を与えるという点では大成功だと思います。

万城目作品は初めてでしたけど、クセのある設定ながら、難解でない文章と明確なキャラ設定で抜群に読みやすい作品に仕上げたのは素晴らしいと思います。余韻を残すものではなかったけど、他の作品も読んでみたいという気にさせられました。
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テーマ : 読書感想文
ジャンル : 小説・文学

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