横道世之介 / 吉田修一

横道世之介横道世之介
(2009/09/16)
吉田 修一

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小さな事件に巻き込まれやすい体質ということ以外は、どこにでもいそうな大学生、横道世之介の物語。この世之介、のほほんとしていて憎めないヤツではあるけども、決していいヤツではないと思います。
というのも、自分は大学時代に加藤同様、友人に部屋に居座られた側なので、加藤の立場がよく理解できるんですよね~。加藤は器が大きいのか大人の対応をしていたけれど、自分は気が向いたときだけ利用しようとする相手を受け入れながらも多少のストレスを感じていたものでした。しかし、世之介はどこまでも素直で等身大。他人に迷惑をかけることはあるし、人のために動くことを面倒臭がったりもするものの、最終的にはきちんと助けに向かっていたりする。こういう楽しい人間関係が築けるのは、彼がイエスマンだからなんでしょう。辛い目に遭ってもへこたれることなく、周囲で起きることをどんどん吸収していく能力というのは抜群で、すごく魅力的です。自分には絶対にできない…。

作品として秀逸だったのは、読む側がいろいろな人間に感情移入できるという点ですね。大抵の作品は感情移入するにしてもせいぜい一人か二人の人間に限られてくると思うんですが、これは違います。世之介の視点で物語を読み進めながら、同時に友人たちの立場で読むこともできる。十数年も会っていない中学、高校時代の友人の顔がふと浮かんできたりして、昔を懐かしむ時間を与えてもらいましたよ。

ただ、世之介は本当に平凡で、読み手としても身近に感じやすい人物だったんですが、読み進むにつれ彼が少しずつ遠い存在になっているような気がして、一抹の寂しさを覚えました。
多くの出会いを経験し、いろいろな事件を乗り越えた世之介は本質的には何も変わっていないんだけども、着実に成長しているんだということを感じられます。世之介にとって東京での初めての友人である京子の、「隙がなくなった」という一言がそれを端的に表現していました。

明るく温かい作品でありながら、ほんのりほろ苦い良作です。
実写化するなら田舎出身&素直そうという点で溝端淳平あたりがいいな。でも、世之介はパッとしない外見じゃないといけないからダメか…。
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テーマ : 読書感想文
ジャンル : 小説・文学

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