ラブリーボーン 他

(500)日のサマー ★★★★★★★☆☆☆
評判が良かった作品なので期待度も相当なものでしたが、正直なところ期待外れ。まっさらな気持ちで観ればそれなりに楽しめる内容だったと思うんですけど、「うおっ、この主人公、めちゃくちゃ共感できる!」というところから「何やってんだよ!」というところまでいくまでにそれほど時間を要しませんでした。
この作品はメインのトムとサマーの魅力によって支えられていると思うんですよ。親近感の湧く素朴な男と小悪魔美女という構図は解りやすいです。ただ、サマーは意図的に男を翻弄するタイプではない天然系小悪魔なので、結局はトムの独り善がりで終わってしまうんですよね。正直なところ自分もこういうタイプを好きになってしまったことがあるのでトムの気持ちはものすごく理解できるんですけど、サマーは恋人にはならないというスタンスを最初から明確にしているから、客観的に見ると彼女に非はないように思える。何だか自分が責められているような気がしてしまって気が滅入ってしまうんです。
イケアでの馬鹿馬鹿しいままごとは面白かったな。逆に、アニメーション挿入によるミュージカルシーンは受け付けませんでした。
サマーと過ごした500日を時系列で並べるのではなく、過去と未来を行ったり来たりという構成なのは、トムの対照的なテンションを明確にするためだと思うんですけど、そのせいで、二人の関係が変化していった原因などが曖昧になっているような気がするんですよね。何だかいろいろ惜しい…。

ラブリーボーン ★★★★★★★★☆☆
何だかよく分からないけど、すごい映画ですね、これは。
あらすじだけ聞くと、自らの死をきっかけに崩壊した家族を、少女が再生させていくまでを描いた作品のようですが、実際は彼女の力は問題を解決するには及ばず、ただ見守るだけで終わってしまっているように思えます。彼女がかなり残忍な男に殺されたにもかかわらず、犯人は捕まらなくてモヤモヤ…。妹が最後に真相を知ったのは何だったんだ! などとツッコミたい箇所は山ほどありますよ。
しかし、猟奇殺人事件とファンタジーを融合したのは斬新だし、最初の40分間はものすごく面白かったです。そして何より、主演の少女、シアーシャ・ローナンの演技が素晴らしい! 久々に女優の涙に心を揺さぶられましたよ。上に挙げたようなまとまりのなさを含めても満足できたのはひとえに彼女の演技力によるものなんじゃないかとさえ思えました。
「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのピーター・ジャクソン監督だけあって映像の美しさはさすがですし、予備知識をできるだけ入れずに観てもらいたい作品です。

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マーク・ウォールバーグ、レイチェル・ワイズ

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テーマ : ラブリーボーン
ジャンル : 映画

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殺人映画

これはホントいい映画だと思います。ぼくは公開終了寸前に六本木でみました。真っ白い悪夢の中でスージーが助けを求めて叫びながら消えていくシーンとかはもう、かわいそうで、どーしたらいいんだという感じでした。

この映画の、いぬふくさんのおっしゃる「モヤモヤ感」というものは、ぼくには「モヤモヤ」ではないんです。というのは、この映画って事件を解決する映画じゃなくて、心を救おうとする映画なんだと、ぼくは思うからです。しかもそれは誰の心を救おうとしているのかというと、映画の中のスージーの家族ではなくて、現実に家族を失った家族なんだとバシバシ感じるんですよ。

映画は映画だから、そこでおこっていることは現実ではありません。優しいパパを演じていたマークは別の映画では巨根のポルノスターを演じています。しかし、実際に行方不明者の家族や、異常者に身内を殺された家族は存在します。

ラブリーボーンは、つまり誰にも知られずに死んでいった人を、その死を見届けることができなかった(そしてまさにその事実が家族を苦しめている)家族にかわって、悼む。そんな映画や文学にしかできない、大切な仕事をしている映画なんです。

だから映画の中で事件がいわゆる「解決」をむかえないのは、この映画が救いたい人たちの現実に寄り添おうとしているからであると言えるし、家族の再生が断片的に中途半端に示されるだけであるのは、そもそも家族再生に主眼はないからだと感じます。ピータージャクソン監督がまず必要だとおもったことは、スージーが(他にも現実のたくさんの人たちが!)どんな風に死んでいったのかを見せること=死を悼むことにあったとは考えられないでしょうか。
以上、ラブリーボーンを断固擁護する会会長、しんちゃんでした。(現在会員募集中)

欠点<魅力

しんちゃんのコメント、ほぼ同意見です。
(まさかここで「ブギーナイツ」の話が出るとは思わなかったけど…)

モヤモヤの一つは、プロモーションの問題もあると思うんだよね。
予告編を見たら、彼女は犯人逮捕と家族再生を見届けないと死に切れないんだと考えるもんなぁ。
家族版「ゴースト」みたいなものだと思ってた。

それと、この映画は主眼を置いていない部分に時間を割きすぎな気がする。
犯人の結末も家族の再生も、あんな適当なまとめ方をするくらいなら、もっともっとスージーのパーソナルな部分の方を中心に描いてほしかった。
最後に大切っぽく描かれている恋愛も、そこまでの扱いがあまりにも小さすぎて、自分はウッカリ忘れていたくらいだったし…。
改めて振り返ってみても、欠点の多い映画だとは思うな。

けど、それを上回る魅力があったのは確かだね。
むしろ、これだけ明らかな欠点がありながら面白いというところがミラクルでしょう!
スージーには心から同情してやり切れない気分になったし、残された者に対する最後のセリフは本当に温かみがあって、こちらまで救われたよ。
擁護する会には入らないけど、オレも地味に布教活動してみようと思います。

良い映画ラブリーボーン

この映画の魅力を評価していただいて感謝します。いぬふくさんのその冷静で優しいスタンスがありがたいです。

しかしながら!
やはりいくつか言わせてもらわなければなりません。

いぬふくさんが指摘された幾つかの「欠点」は、映画としての欠点ではなくて、いぬふくさんが「こうあるべきだ」と無意識に用意した、いぬふく版ラブリーボーンとラブリーボーンとの間で齟齬が生じている部分だと思うんです。そうでなければ、いぬふくさんの「欠点」とおっしゃった箇所をぼくはそう感じなかったことの説明がつきません。
映画の欠点というのは、例えば、連続したシークエンスなのに役者の服が変化している等の画面上の矛盾や、脚本上の矛盾とかをいうのでありますから、いぬふくさんのおっしゃる「欠点」というのは、ほんとうは「なんでこういう描かれ方になるのか理解できない部分」と表現なされたほうがより正確であるし、よりフェアであると思います。

もちろん映画を見る誰もが多かれ少なかれ「こうあるべきだ」という「自分版」と照らし合わせながら、映画をみています。それはそれでいい。でも大切なのは、「自分版」と映画の齟齬を、理解してみようと試みてみることなのではないかと自分は考えるのです。

以上のようなことを申し上げた上で、細かい点を幾つか申しますとですね…

「家族再生と犯人の最後が中途半端である。いっそスージーの内面を多く描け。主眼以外の描写が多すぎる。」というのは、それこそ「いぬふく版ラブリー」と「ピーター版ラブリー」の齟齬でしかないのであって、それを「欠点」とあげつらうのは、繰り返しになりますがフェアではないと思います。
そもそも映画は「主眼の部分」と「主眼以外の部分」に分けられるものではないし、分けられるわけがありません。映画全体の時間のなかで浮かび上がってくるものが主眼=テーマですから。

あと想像していただきたいのは、もし仮に、この映画が「いぬふく版ラブリー」だったとしたらということです。
妹の活躍により、犯人はしっかりと逮捕され、スージーの供養もしっかりとなされ、家族は事件の全容を知り、衝撃を受けながらも話し合い、もう一度未来に向かって歩き出すことを再確認する。スージーはそれを見届けて、天国へ行く…。
この筋はお話に出ていた「ゴースト/ニューヨークの幻」そのままという感じですが、ともあれ、こういうシナリオだったら、行方不明のままになっている身内を持つ人ならば、自分とは関係のないいい気な映画だと思うに違いありません。一般の観客はホッと満足、あー面白かったといって、それぞれの日常に戻る。この映画の持つ善きメッセージは、誰にも届かないでしょう。

ラブリーボーンで描かれている犯罪被害者家族の姿は現実に限りなく近いのではないでしょうか。死んだスージーが家族に対して何もできないのも、被害者家族の現実(死者は何も語ってくれない)をピータージャクソンがいささかもおろそかにしていないことの証明であると思うのです。

最後にひとつ。
スージーの恋愛について、いぬふくさんは途中に描かれてないので、最後に出てきてたとき忘れてたと書かれており、それが映画のシナリオ上の欠点であることをほのめかしておられますが、はっきり申しまして、それはいぬふくさんの事実誤認です。


思い出してみてください。スージーはなぜあのトウモロコシ畑に行ったんですか。そしてスージーはどうして犯人と遭遇してしまったんでしょうか。ぼくはいまでもはっきりと覚えています。そこをもう一度確認してほしいです。この映画にはスージーの恋愛というのは初めから太い芯としてあったし、それがこの映画に大変な深みを与えていることについて、きっと賛同していただけると思っております。

色々批判めいたことも書きましたが、親が赤ん坊を家に閉じ込めて放置して死なせ、中学生が眠っているホームレスに熱湯をかけて半殺しにするこの日本で、ラブリーボーンのような映画をブログに取り上げるいぬふくさんに、心から敬意を表します。ありがとうございました。
ラブリーボーンを断固擁護する会会長 しんちゃん(ご入会はいつでもどうぞ!)

欠点

「こうあるべきだ」とか「こうあってほしい」というのは誰でも、そしてどの映画にもあるだろうね。
「なんでこういう描かれ方になるのか理解できない部分」という表現はズバリその通りなんだけど、あえて「欠点」と言ったのには理由があります。
上のレビューを書いた後、いろいろなサイトでこの映画の感想を読んだのだけど、他の人が批判しているポイントもほとんど共通しているんだよね。
制作側がどれだけ深いテーマを込めたとしても、それが多くの人に伝わっていないということは、何かしら足りない部分があるんだと思ったんだ。

前回の繰り返しになるけど、スージーが家族を見守ることしかできなかったり、犯人が逮捕されなかったりするのは、個人的には気に入っているよ。
日本版の予告編やプロモーションの仕方に疑問を持っただけでね。

ただ、残された被害者家族の気持ちも全然理解できなかった…。
両親の行動がどこにも繋がっていないし、犯人に勘付いた妹には要所要所でスポットが当たって最終的には危険も犯すのに、それによって誰かが救われたとも思えない。
何より、犯人を死なせることで話をまとめようとした作り手の安直な考えがどうかとv-412
「悪者が死んでくれてスッキリ♪」と思った人がどれだけいたんだろうか…。
ちなみに、犯人の結末は試写後の反応によって付け足したものらしいんだけど(今日知った!)、逆にそれでブレが生じてしまったような気がしました。

……………。
せっかく好きな作品なのに、アンチの意見みたいになってきちゃったので、この辺でやめておきます。
コメントだけじゃ伝え切れないところもあるんで、会った時にゆっくり激論したいですなe-463

粘る愛

ラブリーボーンでもなんでもいいんですけど、ある映画に対してみんなが批判しているところが大体同じだと、そこには欠陥(足りないところ)があるという考え方は、どこか変ではないですか?

前回のコメントでも申し上げましたが、そしていぬふくさんも同意していただけたようですが、批判というもののほとんどが「こうあるべきだ」と考えて映画にむけられる、いわば「意見」である以上、それが集中するシーンというのは、その作品の、多くの人と決定的に違う「意見」が色濃く反映されているシーンなんだと考えられはしませんか。

そしてぼくは、これが一番言いたいことですが、そういう多くの人とは違う「意見」を持った映画が、そのことゆえに罵倒され、白眼視され、くそ映画扱いされ、理解されない「意見」をだしてきたお前がわるいんだとばかりに、嘲笑の的にされるのが、捨て置けないのであります。(いぬふくさんはむしろ擁護してくれていることは勿論わかっています!)

映画はみんなが見るものだから、多数意見に沿うような映画をつくるべきですか?
お金を払って見ているんだから、その対価としてお金を払った人の理解できるものを見せなければ、映画としては三流でしょうか?
できあがった映画をはもう変わり様がない。その映画が容易に理解できないものであるなら、観客が歩み寄るしかない。でもそういう労力すら惜しむなら、理解できないものを理解するという、自分にわかるものの限界を越えることは、いつになってもできないのではないですか?

映画の捉え方というのは、現実の捉え方にも侵食しうるし、ぼくはそういう風潮がひろまっている気配を普段からかんじていることもあり、ちょっと粘らせていただきました☆

粘りたくない愛

オレは、映画は作品であり商品なんだと思ってます。
制作者は自分の主張を作品にこめる自由があるけれど、観客はその感想を自由に言う権利がある。
それが作品を真摯に受け止めた結果であるのなら、どういう言い方をされてもやむを得ない部分はあると。
「欠点(欠陥)」は表面だけ捉えると偏った言い方のようだけど、これが自分の心から生まれた正直な言葉です。
主観的な意見がメインになる映画にも、傑作や駄作と言われるものがあるようにね。

そして、観客が映画に歩み寄ることももちろん大切だけれど、制作側も観客を楽しませるための努力をする必要があるでしょ。
たまに、観客のレベルが落ちたと怒る批評家や自分の作品を批判されて観客の理解力不足のせいにする監督がいるけど、個人的にはそっちの方が嘆かわしいと思ってしまうのですわ…。
プロフィール

いぬふく

  • Author:いぬふく
  • 趣味は多数。テニスは主にWTA(女子テニス)、音楽はアメリカンR&BとHIPHOP、ゲームと映画、読書はジャンル問わず。
    詳しくはプロフィールページからどうぞ!
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