その日のまえに / 重松清

その日のまえに (文春文庫)その日のまえに (文春文庫)
(2008/09/03)
重松 清

商品詳細を見る

死を迎えようとしている妻。"その日"に向けて生きる夫婦を中心に描いた短編集。全7編の中で彼らが登場するのは最後の3編だけなんですが、最後まで読めば解る繋がりというものが存在しています。その繋がりも仕掛けと言うほど大げさなものではなく、控えめに忍ばせてあるところに好感が持てました。この辺の書き方はさすが。

"死"を扱った物語というのは感動の押し売りになってしまっているものも多く、これも序盤は感傷的な文章などに興醒めしながらも、一部の話では結局心を揺さぶられてしまいました。
一番は「潮騒」ですね。
会社員の俊治が小学校時代に2年間だけ住んでいた町に立ち寄ったのは自分の余命を宣告された日。そこで同級生だった石川と再会し、海で事故死してしまったオカちゃんの話をするんですが、30年以上の月日が流れても笑顔で語れるような思い出話でもないんです。
個人的には、俊治や石川よりもオカちゃんの両親の心情の方が気になりましたね。この話のラストで両親のその後について触れられているんですけど、涙腺が緩みかけて、危うく仕事帰りの電車の中で泣きだすところでしたよ。「親子の再会が悲しいはずがない。これはハッピーエンドの物語なのだ。いまは思う。」とシュンは語りますが、残念ながら自分は同意できません。何度読み返しても切なすぎる!

最後の短編「その日のあとで」を読む限り、生きてきた意味と死んでいく意味は「考えることが答え」だということを重松氏は言いたかったのだろうけど、そうすると残されたものが背負うものというのは計り知れないものがあるのだと改めて思い知らされた気分です。死んでしまった人を「忘れる」のも一つの選択肢だけれども、それを選ぶ人は少ない。多くが、その人と生きてきたことの意味を探りながら少しずつ前進していき、しかし中にはオカちゃんの両親のような人たちもいる。死は当人だけの問題ではなく、それ以外の誰かにも少なからず影響を及ぼしていくわけで、自分の足跡は死んだ後も少しずつ膨らみながら何らかの形で残っていくんだろうな。と考えると、何だか自分の人生に責任を持ちながらポジティブに生きられるような気がしますよね。

ベタな内容ながらもなかなか楽しめる1冊でしたが、「朝日のあたる家」だけがちょっと異色で後味が全然違うので、この短編集に入れるべきものだったのかはイマイチ解らず仕舞い。

<関連作(重松清作品)のレビュー:「ビタミンF」
スポンサーサイト

テーマ : 読書感想文
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

いぬふく

  • Author:いぬふく
  • 趣味は多数。テニスは主にWTA(女子テニス)、音楽はアメリカンR&BとHIPHOP、ゲームと映画、読書はジャンル問わず。
    詳しくはプロフィールページからどうぞ!
最近の記事
カレンダー(月別件数付き)
カテゴリー
最近のコメント
最近のトラックバック
ブログ内検索
リンク
RSSフィード
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる


いぬふくの最近観たDVD
いぬふくの今読んでる本