ムーンライト

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今年のアカデミー賞で作品賞を受賞した上に、おそらく発表時のアクシデントにより注目度が増し、近所のシネコンでも急遽上映されることになったので、さっそく観に行ってきました。
差別を描いた映画は数あれど、黒人でゲイというマイノリティ×マイノリティ作品は珍しいですね。黒人映画というと銃とドラッグに塗れたマッチョな世界か、白人から迫害される差別を描いた内容と相場が決まっていたんですが、本作はストレートな恋愛映画です。

この映画、登場人物のほとんどが黒人なので、人種差別というものは存在しません。しかし、ゲイの主人公は気が弱くナヨッとしているので、マッチョな黒人社会では当然のように虐められます。加えて、母親はドラッグ依存症。
少年時代の主人公、シャロンはそんな苦境にありながらもフアンという男と出会い、泳ぎを教わったり心の安らぎを得ながら成長していきます。10代になった彼は同級生に恋をし、距離を縮めていきますが、同性愛が理解されない世界の中でそれもまた悲しい終わりを遂げてしまいます。映画は彼が20代に成長し、その相手と再会するところまで描いているんですが…。

まず印象に残ったのが映像と音楽の美しさ。
作品名にあるように、映像面の見せ場は月明かりに照らされて青く輝く黒人の肌でしょう。中でもフアンがシャロンに泳ぎを教える場面ではその水面の揺らぎと、BGMのヴァイオリンが素晴らしくマッチして官能的ですらありました。
黒人映画でここまで静かで繊細な作品は過去になかったのではないでしょうか。

キャスト的にも、それぞれの世代のシャロンを演じた3人も素晴らしかったですし、オスカーを獲ったマハーシャラ・アリはもちろん文句なし。しかし、個人的にはドラッグ依存症の母親を演じたナオミ・ハリスにグッときました。「007」シリーズではゴージャスなマニーペニーだった彼女が、クスリ漬けで息子に暴言を浴びせる最低な女なんですよ。これが本当に憎くて仕方ないんですが、同時に「ナオミ・ハリス、すげーぞ」と感心しっぱなしでした。ミュージシャンのイメージしかなかったジャネール・モネイもよかったな。

ただ、10代の展開が最高だっただけに、20代のエピソードが弱く感じてエンディング後の余韻が残らなかったのは残念。観賞後のカタルシスはゼロに近かったです。
そのせいか、アカデミー賞の作品賞という目で見るとやや弱い気もして、ここ数年、白人至上主義と言われたアカデミー賞や、トランプ政権の反動というのも否めませんけど、逆にオスカーを獲らなければ隠れた名作として語り継がれていた可能性もあるなと思わせてくれる、そんな秀作でした。

★★★★★★★★☆☆
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テーマ : 映画★★★★★レビュー
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