4:44 / Jay-Z



Beyonceの最新作「Lemonade」で言及された夫Jay-Zの不倫問題。もちろんフィクションの可能性も考えつつも、あまりにも具体的すぎる内容に「噂は本当だった!」と世界中で騒ぎになったものです。そこで気になったのは、Jay-Z自身はこのアルバムをどう受け止めているのかということ。この一年間、Jay-Z側からのリアクションがなかっただけに新作の発表はこれまで以上に注目を浴びましたが、本作は予想を上回るほど真摯な謝罪アルバムでした。

1曲目の「Kill Jay-Z」から生々しい告白。ネットで出回った、(浮気がバレて)彼がSolangeに殴打された事件にも触れ、「(度重なる浮気で離婚することになった)Eric Benetのようになるところだった」、「(Futureの息子が元妻Ciaraの新しい夫であるアメフト選手と遊んでいるのを受けて)将来、他の男が自分の息子とアメフトしているなんて…」とすっかりしおらしくなっていますね。
「(3)Smile」では母親がレズビアンだったことも告白するなど、話題性も持たせながら改めて家族の大切さを確認しています。

ただ、本作を聴いての僕の率直な感想は「Jay-Z、カッコ悪いな」でした。
結果的にこの方向性は世間を納得させるには最適な手段になったのかもしれませんが、かつてはヒップホップ界でキングと呼ばれた男が、家庭内で力を失う瞬間を見せられたような、淋しい感覚に陥ります。まぁ、彼は今やハスラーではなくビジネスマンですから、下手に世間を刺激するアルバムを作るわけにもいかないんでしょうけどね。
詞がこれでもトラックに刺激があれば楽しめたんでしょうけど、それもありません。Beyonceが家庭問題から社会問題までテーマを広げてジャンルレスな作品を作ってくれたのに比べると雲泥の差で、あくまで「Lemonade」あっての本作なんだということを痛感させられました。

フィジカル盤ボーナストラックの「(12)Blue's Freestyle/We Family」のように、素晴らしいとまではいかなくともじわじわ好きになるトラックなどもあるので、決して駄作とは思わないものの、ここ数年のKendrick LamarやDrakeの活躍を見ている側としては、消化不良なのは否めません。

★★★★★★☆☆☆☆

◆前作の評価
「Magna Carta... Holy Grail」 ★★★★★★☆☆☆☆

「4:44」(US35位)
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テーマ : HIPHOP,R&B,REGGAE
ジャンル : 音楽

Music Review(2017年7月)

Witness / Katy Perry ★★★★★★★★☆☆
前作はパワフルでありながらも2ndアルバム「Teenage Dream」の後追い感が否めず、聴き手としてはこの方向性に行き詰まりを感じていたんですが、今作はEDM色を強めて、それでありながらも少し内省的で社会的なテーマを持った作品になっています。
先行シングル「(9)Chain To The Rhythm」、「(11)Bon Appetit」、「(4)Swish Swish」はどれも気分が高まるトラックで個人的には好感触でしたけど、全体的には少しテンポを落とした曲が目立ちました。本音を言えば、先行シングルがよかっただけにもう少しアップが欲しかったところ。特に(9)が流れるまでの前半は平坦な印象さえ残ってしまうんですよね。まぁ、個人的にはシングルの3曲だけでもアルバムを聴く価値があると思えるくらいですけども。
楽曲のインパクトが軽減したためか、本作はKatyのメジャーデビュー以降初めて全米1位曲のないアルバムになってしまいそうですが、その分統一感は過去作を上回り、長く楽しめそうな気がします。

◆前作の評価
「Prism」 ★★★★★★☆☆☆☆



「Swish Swish」(US46位、UK40位)。SNLでのパフォーマンス動画です


Melodrama / Lorde ★★★★★★☆☆☆☆
デビュー作「Pure Heroine」は2014年のベストアルバムに選ぶほど気に入り、今作からの先行シングル「(1)Green Light」はその大胆な路線変更に戸惑いつつも次第にのめり込んでいったわけですが、アルバムに関してはまだ魅力を見出せていません。
サウンドもヴォーカルも相変わらず個性的だし、前作は今聴いてもいいと思えるから、この音に慣れや飽きが来たわけでもないはず。なのに、前作を聴いた時のような高揚感が得られないんですよね。何が不満なのか自分でも断言はできないんですが、単純にプロダクションとヴォーカルの相性なのかもしれません。
本作ではfun.のギタリストであるJack Antonoffがほぼすべてのトラックに関わっています。Taylor Swiftの最新作などで存在感を示した人ですけど、Lordeに合わせたアレンジが個人的な好みとは違うというのは確かかな。シンプルなトラックだからこそヴォーカルが映えるというのが一般的な見解だとは思うんですが、僕は(1)のような強烈なトラックをも突き破ってくるLordeに酔いしれたかった…。
それでも、20歳になったばかりの彼女が既にこれだけの引き出しを持っていることには驚きを隠せませんし、詞を含めればまだまだ新しい側面も見えそうなので、評価は暫定的なものということでもう少し聴き込むつもりです。

◆前作の評価
「Pure Heroine」 ★★★★★★★★★☆

「Green Light」(US19位、UK20位)。PVも好きですが、やはりSNLのパフォーマンスが衝撃的です

テーマ : 洋楽CDレビュー
ジャンル : 音楽

Music Review(2017年6月)

Strength Of A Woman / Mary J. Blige ★★★★★★★☆☆☆
Mary J. Bligeの2年半ぶりのオリジナル・アルバム。2014年に2作リリースをしましたけど、あちらはサントラとロンドン収録の異色盤だったので、かなり久々感があります。
シングルカットされた「(1)Love Yourself」と「(2)Thick Of It」は方向性こそ違うものの、90年代のヒップホップソウルを思い起こさせる曲。この2曲をはじめ、アルバム全体が原点回帰と言える内容になっていますね。ただ、同じ方向性なら全盛期の20代の頃に及ぶはずもなく、どこか物足りなさが残ります。
個人的にピンと来たのはジャジー・ソウルの「(3)Set Me Free」や、アップの「(12)Telling The Truth」あたり。若い頃から貫禄のあった人ではありますが、年齢を重ねることで温もりが増しました。傑作2ndアルバム「My Life」の頃の質感が漂う「(6)U + Me (Love Session)」もいいですね。
愛聴盤とまではいかないかもしれませんけど、DJ CamperとB.A.M.といった新しいプロデューサーと組みながらも時代に流されず自身の音楽を追求する彼女の姿勢は今後も支持していきたいところ。

◆前作の評価
「The London Sessions」 ★★★★★★☆☆☆☆

「Thick Of It」(US R&B47位)


Back 2 Life / LeToya Luckett ★★★★★★☆☆☆☆
いきなり清涼感溢れる「(1)I'm Ready」で幕を開けるLeToyaの8年ぶりとなる新作は、前作同様彼女の歌にスポットを当てた王道R&B作品。古臭くはあるものの、今の時代にこのシンプルなトラックはかえって心地よく、R&Bの魅力を再確認できる一枚になっています。この流れでAshantiあたりにも久々に新作を届けてもらいたいものですね。
嫌悪感を抱く要素は一切なし。しかし、同時に他のアーティストとの差別化を図れていない点も相変わらずです。「(9)Worlds Apart」のようなベタベタなスロウを歌わせると歌唱力の弱さも見えてきてしまいますし、「(10)Weekend」あたりは捨て曲っぽく思えてしまったんですが、LeToyaのヴォーカルに工夫があればもう少し魅力が出てきたかなと思えてしまうんです。
彼女の声を活かすなら、いっそのこと軽めのミッドで固めて春~初夏仕様のアルバムというのもありかな。ちょっと聴いてみたい気もします。

◆前作の評価
「Lady Love」 ★★★★★★☆☆☆☆

「Back 2 Life」

テーマ : HIPHOP,R&B,REGGAE
ジャンル : 音楽

Damn. / Kendrick Lamar



大傑作の「To Pimp A Butterfly」を経て、新たなテーマを掲げた4thアルバム。
とはいえ、人種差別を前面に出している点は変わらずで、黒人に差別的な態度を取る警察に対し敵意すら露わにする場面すらあります。
FOXチャンネルのコメンテーターが「若い黒人に悪影響を与える」と話したことで対立もあったようですが、僕個人としてはこの対立に関してはどちらにも理解を示したいところではあります。アメリカに根深い黒人差別があるのはこれまでのヒップホップ作品を聴いていても明らか。Beyonceも昨年の「Lemonade」でその姿勢を出していましたけど、Kendrickの方が詞もビデオもより過激な分、誤解を招き「警察=悪」というイメージを定着させてしまう危険性は確かに孕んでいると思います。

ただし、彼は決して敵意だけを表現しているのではなく、その中で自分の中に潜む悪や弱さと葛藤しているんですよね。それは彼個人の問題なのか、黒人だからなのか、それとも人間として当たり前のものなのか。前作にあった詞の二面性(性と社会的なテーマが同時に潜むなど)は薄れましたし、前作に比べてラップ自体もアグレッシブで生々しく感じられますけど、この葛藤を表すためには最適な手段でしょう。

プロダクションの面ではだいぶシンプルになりました。個人的にはジャズ色を強く取り入れた前作の方が好きですね。Mike WiLL Made-Itが手掛けた「(2)DNA.」と「(8)Humble.」がキャッチーなのが災いして、他の曲のインパクトが薄れてしまっているような…。Rihannaと組んだ「(6)Royalty」でさえ、期待値には届きませんでした。
現時点でも聴き応えのあるトラックは揃っていますし、もっと詞を読み込んでいけば前作同様に評価が上がる可能性も残していますが、前作がよすぎたために物足りなさも感じるのも確かです。

★★★★★★★☆☆☆

◆前作の評価
「To Pimp A Butterfly」 ★★★★★★★★★☆

「DNA.」(US4位、UK18位)

テーマ : HIPHOP,R&B,REGGAE
ジャンル : 音楽

Music Review(2017年5月)

そろそろKendrick Lamarの新作のレビューも書きたいところですけど、やはり詞を熟読した上で感想を書きたいので、国内盤のリリースを待って単独記事にする予定です。

More Life / Drake ★★★★★★★★☆☆
本人曰く、これはプレイリストだそう。普通のアルバムやミックステープとどう違うの?という思いもありますし、正直オリジナルアルバムと呼ぶよりもコンセプトが薄く価値が下がってしまうような気もしますが、実際はかなりの充実作です。「If You're Reading This, It's Too Late」はハードすぎ、「Views」はソフトすぎてダメだったんですが、今作はちょうどいい塩梅なんですよ。
ゲストはKanye Westのような大物から、PartyNextDoorやSamphaといった人気上昇中のアーティストまで多彩。「Teenage Fever」では、交際も噂されるJennifer Lopezの「If You Had My Love」をサンプリングするなど遊び心も感じられます。傑作2ndアルバム「Take Care」の衝撃にはさすがに及ばないものの、ヒップホップだけでなくソウルファンや昨年の「One Dance」やRihanna「Work」にハマったダンスホール好きにまでアピールし、なおかつちゃんと独自性を出してくるあたりさすがとしか言い様がありません。
特に「(3)Passionfruit」はこの夏中ずっとリピートし続けたいトロピカルなトラックです。

◆前作の評価
「Views」 ★★★★★★★☆☆☆

「Passionfruit」(US8位、UK3位)の音源


Memories: Do Not Open / The Chainsmokers ★★★★★☆☆☆☆☆
昨年の全米シングルチャートを制した「Closer」で一躍トップアーティストとなったユニットの1stフルアルバム。輸入盤は「Closer」は未収録ですけど、「Paris」や、Coldplayと組んだ「Something Just Like This」といったヒット曲が収録され、当然のようにこちらも全米1位に輝きました。
確かに耳障りは悪くないです。けど、率直に書いてしまうと、どれもほとんど同じに聴こえるんですよね。この数年間で数々のEDMヒットが出ましたが、それらと比較しても特に秀でている点が見当たりません。強いて言えばEDMには珍しくしっとりとしたトラックが目立つところなのかもしれませんが、疾走感のある「(2)Break Up Every Night」が本作のベストトラックだと思っている自分とは単に相性が悪いだけかも。
ちなみに、僕はApple Musicで聴いただけですけど、購入する方は昨年のヒット「Closer」と「Don't Let Me Down」が入った国内盤をオススメします。

「Something Just Like This」(US3位、UK2位)。PVがないのでリリックビデオです

テーマ : アルバムレヴュー
ジャンル : 音楽

プロフィール

いぬふく

  • Author:いぬふく
  • 趣味は多数。テニスは主にWTA(女子テニス)、音楽はアメリカンR&BとHIPHOP、ゲームと映画、読書はジャンル問わず。
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